山形県司法書士会
更に,源泉徴
収手続の便宜という観点からすると,源泉徴収を行う側にとっても,ま
た,その適否を確認する課税庁の側にとっても,実際の稼働日数を確認
することなく源泉徴収税額を算定できるという意味では,「計算期間の
日数」を本件各期間の全日数と考える方が簡便であることは明らかであ
る。
このように,基礎控除制度の趣旨・目的として考えられる様々な要
素を踏まえて検討していくと,文理解釈に基づき,「計算期間の日数」
を本件各期間の全日数と解することにも十分な合理性が認められるもの
というべきである。
被告の主張は,極端な事例を挙げて,不合理な結果
が生ずると主張しているものにすぎず,採用することはできない(なお,
被告の挙げる例を,そもそも,不合理な結果とみるべきであるかどうか
も疑問であるし,仮に不合理との評価があり得るとしても,その帰結は,
源泉徴収が行われないというレベルにとどまるのであって,課税そのも
のが否定されるわけではないのであるから,文理解釈の結果を否定しな
ければならないほど重大な問題であるとはいいがたいと考えられること
を付言しておく。)。
また,同様の点を指摘できる上,そもそも,
継続的契約に基づいて継続的な稼働形態にあるホステスと,いわば日々
雇用的な稼働形態にあるホステスの取扱いを同一にしなければならない
という前提そのものにも疑問があるのであって,いずれにせよ被告の主
張を採用することはできない。
ウ以上の次第で,施行令322条所定の「当該支払金額の計算期間の日
数」とは,本件でいえば,本件各期間の全日数を指すのが原則であるとい
うべきであるが,前に説示したとおり,ホステスの稼働状況の実態が,継
続的契約に基づいて稼働をしているのではなく,日々新たに締結される契
約に基づいて稼働していると認められる場合には,実際の稼働日数がこれ
に当たるものと解され,被告の主張には,このような趣旨も含まれている
と考えられる。
そこで,本件が,上記のような場合に当たるかどうかを検
討してみると,前認定の事実(第3,1,(3)・(4))に証拠(甲40,乙
3,4,乙18の1ないし4)を併せると,?本件各ホステスは,報酬支
払者である原告に応募申込書を提出して採用され,少なくとも形式上は,
いったん採用された後は,原告所属のホステスとして取り扱われ,稼働日
ごとに契約を締結し直すといったことは行われていないこと,?ホステス
は,毎日,原告から出勤の可否を確認され,出勤可能と回答した者のみが
出勤して稼働しており,この意味において,各ホステスには出勤するかど
うかの選択権が与えられているものの,原告側に出勤を求めるホステスを
拒否する自由があることをうかがわせる証拠はなく,ホステスとしては,
当初締結した契約に基づいて,その希望する日に出勤し,稼働することが
できる地位が与えられているものと解されること,?ホステスの報酬額を
算定するに当たっては,報酬支払期間中の同伴出勤の数等が実績として評
価され,加算される仕組みになっており,各期において支払われる報酬は,
単なる日給の積み重ねではなく,支払期間中の実績を全体的に評価するこ
とが予定されているものと解されること,?本件各ホステスの出勤状況を
みると(乙18の1ないし4),出勤日数1日という者がいる一方で,出
勤日数11日,12日というほぼ常勤に近い者も少なからず存在し,各ホ
ステスの各期ごとの出勤状況にも変動があることがうかがわれることなど
の事実が認められ,これらによれば,本件各ホステスは,あくまでも原告
との継続的な契約に基づいて出勤し,稼働しているものであって,原告と
の間で,出勤日毎に新たな契約を締結し直しているような実態にあるとは
認め難い。
したがって,本件各ホステスの勤務実態という観点から被告の主張を採
用することも困難であるというほかはない。
(4) 以上の検討結果によると,争点(1)に関して被告の主張を採用することはで
きず,原告の主張が正当であるというべきである。
3 争点(2)(本件各ペナルティの控除の可否)について
前示のとおり,本件各ペナルティは,本件各ホステスが原告との間で前日ま
でに出勤する旨を合意したにもかかわらず,欠勤,遅刻等をした場合に課され
るものであり,その法的性質は,上記合意違反を理由とする,債務不履行に基
づく損害賠償と解することができ,そうであれば,本件各ホステス報酬とはも
ともと異なる性質のものである。